盗みの告白 高瀬隼子さん

とある媒体にエッセイを寄せ、しばらく経(た)った頃、お詫(わ)びの連絡があった。わたしのエッセイの一部を書き写したものを、自作のコラムとして送った人がおり、そうとは気付かず別の欄で掲載してしまったのだという。読者の方から「似ている」と指摘があり、盗用が発覚した。書き写した人は「自分では良い表現が思いつかず、つい使ってしまった」らしい。丁寧なお詫びがあったこともあり、大きな問題として取り上げることもなく終わった。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO88134810Y5A410C2BC8000

今朝の日経コラム 芥川賞受賞作家の高瀬さん。

優しい書きぶりとその読みやすさ、でもとても学びのあるコラムでした。恥ずかしながら、芥川賞を受賞されていた作家さんだったことを知らなかったのですが・・・早速Amazonで受賞作品「おいしいごはんが食べられますように」を買った。キンドルもあったけど、なんとなく子どもに読んでほしいと思う本ではと予感したので、紙の本にした。ちょっといい本に出合えた気分がする。

このコラムで、一番気になったのは、以下の部分。

このことを知人に話すと、「バレないと思ったのかなあ」と不思議そうだった。そうですね、と頷(うなず)きつつ、わたしは違うことを考えていた。多分、盗用した人はバレないだろうかとか、バレても仕方ないとか、考えていなかったんじゃないか。ちょうどいいものが目の前にあるから使ってしまおう、とそれだけだったのではないだろうか。

そっか・・・うなずきつつ、別のことを考えていた。考えるだけで、知人に対しては言っていない。なぜだろうと思いながらも、言わないで自分の頭の中で思考するにとどめる・・・私は・・・職業柄もあるだろうが、ついお役にたつのではと思うと次々に言葉を発してしまいがちかなと。相手の話を聞きながらも、思考することにとどめることも大事だなと、ふと気づかせる文章でした。